●名前:Dave Barenbrugge(デイブ バレンブルーギ)
●出身:ドイツ系アメリカ人
●年齢:51歳(2006年7月現在)


1995年よりキュー製作を開始。高い精度を要求されるバタフライポイントの美しさに魅せられ、今ではその第一人者と称されるまでになる。
飾りリングの細かさもつとに有名で、キューメーカーの間でも評価が高い。
ハードウッドをベニア材の代わりに用いる独特の手法で、誰にも実現できないアートを表現する。
ジョイントピン以外はピンを使わず、尚、スティフな撞き味をも実現するDave Barenbruggeのバタフライ。古く美しいデザインにソリッドなプレイアビリティを兼ねそなえている唯一のキューである。





 原点・・・
Dave Barenbrugge を語る上で必ず知らなければならないこと、それは Dennis Dieckman の存在です。ご存知の方は少ないと思いますので、簡単に説明しますが、Dieckman はキューメーカーと言うよりは研究者と言ったほうが正しいと思います。もう60歳前後かと思いますが、未だに自分の作風を決めず、どのジョイントが良いか、テーパーや素材なども経験で探求しているキューメーカー?です。逆に言えば、大体のことは他の誰よりも知っているのでアドバイスも上手です。自分の作品をこよなく愛しますし、我が子のように思っていますので、あまり“売る”のは上手ではないし興味もない。買う側にしてみれば、彼のキューは様々なスタイル・素材があるため、選びにくいという難点があります。
Dave は Dieckman に会う前にも先日1月に亡くなった Jim Olms に先にインスパイアされ、キュー作りを始めました。Dave のキューメーカーとしての経験はまだ10年程で他の人に比べると非常に短いのですが、その下地になっているのが Jim Olms と、とりわけ Dennis Dieckman の30年程の研究です。

よくキューメーカーの中には「10年足らずのキャリアじゃ良いキューは作れる訳がない」と言う人がいます。私もそういう意見のビッグネームの方たちとのお付き合いが深いので、意見やアドバイスは黙ってきくようにしています。なぜそんなことを言うのか、ただのやきもちなのか、偏見なのか、私へのアドバイスなのかを自分で判断するようにしています。Daveと私とのことも、もう既に何人からも探りやアドバイスを貰っています。
私の経験から言うと、今まで彗星のように現われたキューメーカーが何人かいます。あなたは誰の名前を思い浮かべますか?Samsara、McWorter、Chudy、Dishaw・・・その他、CognoscentiやSouth West、最近ではManzinoなどもですね。成功した理由、認められた理由は各々違うと思いますが、ここでは述べません。ただ、Samsara にはDave Dousetteの存在、South West には David P. Kersenblockの存在が欠かせません。考えてみると、Dennis Dieckmanの存在がまさしく SW の Kersenblock のような気がしますし、彼とのヒッピーのような生活、考え方が Dave Barenbrugge Cue の自由な発想、アート感覚になっていると思います。また、奇しくも Samsara や SW は、木工のHighクラフトマンシップで語られます。この点でも Dieckman の長年の研究・経験を活かした Barenbrugge Cue の構造やプレイアビリティの原点になっていますネ。


青い空、赤い土、サボテン… Daveがひと目で気に入ったアリゾナの風景。

 信念・・・
年にいくつもの催しがここアメリカでは行われます。そのイベントごとに参加するメーカーや数が違うのは当然です。でも Barenbrugge Cue のような個性的なメーカーはまず滅多にいません。アメリカ人の常識、これは日本でも同じかもしれませんが、それは、「Less Work, More Money!!」。キューメーカーの中でもこの考えは当たり前のようで、4年程前、Tim Scruggs や Mike Cochran と、アメリカと日本の違いについて朝から晩までガンガンやりあったのを覚えています。皆がCNCに走る中で、皆がパーツサプライヤーに走る中で、じっと自分の足元を見つめ、時間をかけてステップアップしている人たちは果たして何人いるのでしょうか。CNCが悪いとか、パーツを買うのが悪いと言っているわけではありません。現に私は Barry Szamboti に何年も前から、CNCを導入したらいいのでは、と強く勧めています。(現在もまだ実現する予定はどこにもありませんが…。)
私は、自分が持っていないパーツ、製作できないパーツを買うのは悪いことだとは思っていません。自分にとって何が必要で、どこまで許されるのか、どこにプライドを持つのか…。Tim や Mike のように“買う”ことをしないのはとても良いことだと思うし、「偉いネ!」と褒め称えられることだと思います。

話がそれてしまいましたが、Dave Barenbrugge の個性も、実はこのアメリカ人の考え方とは全く反対の考え方からきています。作り方、仕上がりを見ると、本当に驚きます。
先日、Joss Cue の Dan Janes に、「世界中で一番カスタムキューを手にしたのは誰だと思う?」と聞かれました。「(?意味わかんない)??」、ニコリとして、「Lucky、君だよ」。そんな評価をされる私が惚れ惚れするくらいです。
今ではパーツも何も全部自分で作っています。パーツを購入して作っていた時期もない訳ではないのですが、その時の失敗・不満も、今のキューにはしっかりと活かされているようです。健康に気をつけて、息長く頑張ってもらいたいですネ。




 最近の楽しみ・・・
Dave は今、Cathy Fergson という女性と同棲しています。事実上は夫婦のような関係ですが、二人とも別々に子供がいるため、結婚はしないそうです。Cathyはとても聡明な女性で、かなりの収入があります。日本で言えばバリバリのキャリアウーマンですが、Dave のひょうきんなところ、冗談のような生き方が Cathy を癒してくれるそうです。お互いに「BEST PARTNER!!」と認めあう、羨ましいカップルです。Dave のとても繊細な性格についてもよく知っていて、うかつに他人とは話をさせません。今まで何人もの人が Dave を言葉で傷つけ、ひどい時には7・8週間もキュー作りに集中することができなかったことさえある、と今回のValley Forgeで教えてくれました。Dave の作品をこよなく愛し、認め、支えてくれる Cathy。彼女のような女性は、またこのアメリカではなかなか捜せない大切な存在です。


いま二人は新居を建てています。ハイクラス向きの新興住宅地の一番見晴らしの良い所です。しかもなんと、Dave は昼間、自ら現場監督をしているのだそうです。
休日には二人で内装の打ち合わせをしたり、テラスのデザインの変更をしたり…キュー作りは Shop の移転のこともあり、夕方から夜中にかけてやっているそうです。


Daveは、頭でよく考えてから行動します。デザイニングはとても楽しいようですが、彼のキューは大変手間がかかります。先日、Ernie が Dave のキューをじっと見て一言、「This cue has a lot of work. It takes long time.(これは大変時間がかかる作品だよ)」。私は、見る人が見ればわかるのだな、と心の底から嬉しかったです。
手順やデザイン、木に対する正しい接し方、キューの構造…どれも一つ間違えば大きく評価を下げます。アリゾナの砂漠で作っていて日本に持ってきても曲がらない工夫。他の皆は芯材を使います。また、簡易化のためにラミネート状にするメーカーも多いのですが、Daveはしません。木 本来が持っているしなり、堅さ、美しさを損なわないようにという気持ちがとても強いのです。



 Barenbruggeの将来・・・
Barenbrugge Cue のこれからはどうなるのでしょうか。今回、彼の話を聞いて思うことは、新しいデザインについて大変興味を持って研究しているようです。残念ながら、Valley Forge ではインスパイアされる作品はなかったようですが、製作方法については、Black Boar の Tony の Shop を訪ね、いろいろ聞いていました。Tony は簡単にしか答えず、(ヒントは出したから後は自分で捜しなさい)といった感じ…。Dave に聞いたら「やはり Shop を見せて貰ったのはとてもありがたかった。」とのこと。Daveの参考になるのは、Samsara と Black Boar くらいだろうと私は思っていましたが、どういう風に活かされていくのか、大変興味がありますね。