Samsara ●名前:Jim Stadum(ジム ステイダム)
     Dave Doucette(デイブ ドーセット)
●Shop所在地:ノースダコタ
●製作開始:1991年

2005年3月、私達はノースダコタにある“Samsara Cue”のShopへキューディーラーとしては初めて足を踏み入れました。
キューメーカーを含めても、史上2組目の貴重な訪問客となったのです。
カナダとの国境近くにあるノースダコタのラグビー(SamsaraのShopがある小さな街)は人口およそ3000人。見渡す限り広い台地と青い大空。アメリカの大きさを改めて感じます。視界を遮る物がない為に、「あっちでストームが起こっている、あれは雪雲だよ。」などと遠くの天気まで分かります。
Shopに入ると・・・
Shopの中に設置されたビリヤードテーブルの横には、Daveが1991年にJimのために作った3本のキューや、その時代を語る記念キューが並んでいました。
Jim StadumとDave Dausetteが出会ったのは1991年、Jimが当時使っていたキューをリペアに出したいと友人に相談したところ、Daveを紹介されたのです。Daveの自宅は木材関係のShopであった為、幼い頃から木工細工に興味を持っていて、わずか12歳にして始めてのキューを製作したそうです。木材の構造やプールテーブルの製作など、幅広い十分な知識を自然に習得できるという、キューメーカー達からもとてもうらやましがられる環境で育っていました。20歳を過ぎた頃には既に木工や組立、設計についての知識も兼ね揃えていたDaveは、「ちなみに自分専用のキューを作ったのは26歳の頃だよ。」と簡単に話します。
Jimにキュー製作を頼まれたDaveは、自分とJimの奥さんLaurieの分も合わせて3本のキューを作り始めたのです。JimはDaveのキュー作りにとても興味を持ち、自分たちのキューが仕上がるまでの一部始終を自分の目で見届けたそうです。勉強熱心なJimらしい行動ですね。こうして出来上がった3本のキューが、そう、Shopに飾られているSamsaraの始まりとなった記念キューです。
Samsara--Looking For The Best

当時Daveは高級家具製作や機械製作の仕事を、Jimは建設関係の仕事をしながら1991〜93年の3年間で約70本のキューを作り上げました。2人のPoolへの情熱と、木工構造に関する知識や才能はこの頃から素晴らしいものでした。その後自分たちのキューにふさわしいネーミングを考えていたある日、友人がそれとなく提案したのが“Samsara”。インディアンの言葉で様々な意味合いを持ちます。例えば、「The cycle of life(輪廻転生のようなもの?)」「Striving to be the best」「Looking for the best」、つまり、ベストを求めて最後にたどり着くもの、といった意味合いです。常に自分たちのベストを追い求め、楽しんでキュー製作をする彼らにまさにぴったりのネーミングだと思いませんか?
Daveは物静かな性格で、初対面の人と話すのは苦手です。
だからキュー製作をビジネスとした時、Jimの存在がDaveには必要だったのです。
Daveは“I'm not businessman”と笑って言います。
Daveの作る主張あるキューと、Jimのビジネスセンス、2人はとても息の合う仲の良いパートナーなのです。
JimはDaveと一緒に機械を作り出したり、システムの調整、新しいプロジェクトの開拓、取引先との交渉やExpoへ出向くことなどが主な仕事。もちろんキュー製作にも参加しますが、製作に関してはDaveのワンマンショップといっても過言ではないでしょう。デザイニングから製作の終始はほとんどDaveがハンドリングして一日中機械の前で仕事をしています。

Samsaraの独特な製作手法は“インターシャ”と呼ばれるもので、Daveは本から独学で勉強したものです。その手法を取り入れて生み出されたのが「Swirl」「Braid」「Fantail」「Spider web」「Barrel」などの美しい曲線デザインです。これがSamsaraと一目でわかる主張あるデザインとなりました。
このノースダコタに移ったのは2000年1月。それまでいたニューハンプシャーから約4000キロ離れた街に、更なる成長を求めて来ました。キューの原材料が値上がりする中、土地や生活費が他より安いこの街(実はJimとLaurieの故郷でもあります)に移る決心をしたのです。

「この選択は僕たちにたくさんの幸運を運んでくれたよ。」とJimは話してくれました。たくさんの部屋がある広いShopや家を持つことができたことももちろんだが、Jimの息子Jacob(14歳)とPatrick(10歳)の子育てにも最適の環境でした。また、長い間受けてきた都会の環境のストレスから開放され、キュー製作に集中できるのだそう。
冬は常に氷点下のカナダの国境近くでは湿度が10%前後という日も珍しくありません。だから最近では湿度を50%に保つ為にオートマチックの大きな加湿器をShopに入れました。これが最近のSamsara Cueが曲がりにくくなった大きなKeyです。この加湿器は一日50ガロン(約190リットル)の水を消費するのです。
日本でも人気の高いプレデターシャフト(314シャフト)の製作にも大きく携わっているSamsaraのShop。
新たなことに取り組む姿勢は他のキューメーカーとはちょっと違います。“新しいことに目を向け”“学ぶことに貪欲”、そんなJimとDaveは最高のパートナーです。Samsara Cueのコストパフォーマンスの高さももちろんですが、キュー製作にかける心意気とこだわりをしみじみ感じられた有意義なShopでした。

Lucky's Cue International